とらのようふく

撮ったり書いたりしています。

宝塚について

前回、山登りが好きだ、と書きましたが。

もちろん好きですけど、実は山登りの億倍くらい好きなことが私にはあります。

それは宝塚歌劇です。

 

 

「終わらないで、終わらないで、ずっと観ていたい、終わらないで」

7年前、当時小学校低学年だった娘が宝塚歌劇の舞台を観ながら呟いた言葉。

瞬きすらも惜しんで、ほぼ目を見開いたままの3時間を過ごした彼女は、終演後、ほとんど口を開かず寂しそうに劇場を眺め、劇場の外に出て、本当に終わってしまったと実感することが苦しい、といったようなことをぽつりぽつりと話していました。怒涛の感想が降って来るのだろうと構えていた私は肩透かしにあったような気分になったのを覚えています。

 

 

その時はですね。

んー?まあ楽しんだということなのかな?話が難しくて呆気に取られている間に終わったのかな?リアクションちっさいなあ、くらいのものでした。子どもの付き添いで観劇しただけの、ひとつも何も動かされなかった私には。

 

でもね、今は。

今の私がそんな言葉を聞いたなら。

全力で、そやんなっ!めっちゃわかる!!と背中をさすり、

よし、この公演あと5回観よ!余裕あったらもうちょっと増やしてもええしな、ああーほんま宝塚最高!!と肩を組み、フォーエバータカラヅカを歌いながら花の道を闊歩していることでしょう。

 

 このヅカ娘の影響下における7年間で徐々に浸食されてついに陥落したのねうふふ、とヅカ好き上級生の方からお声がけいただくのですが、私めの場合は突然に目が開かれるパターンの「沼飛び込み」でした。7年間こんなもんやろと肘をついて眺めていた景色。手を目にやるとそこにはサングラス、あれ、こんなんかけてたっけ?と濃い色のそれを取ると、そこには極彩色の見た事もないような世界が。サングラスを叩きつけ、一番高い場所から豪快な水しぶきを上げて頭からその美しき沼に着水したのです。

 

 その後、娘が持っているDVDを狂ったように観まくり、かつて一度は観たはずのものを、ああこのシーンは、この演技はこんなにも素晴らしかったのか…と太ももを叩きながら悔しい気持ちになるとともに、ここで気づけたのだから、まだ良かったんだ、集中!ああ、素晴らしい‥と涙する幸せに溢れた日々を送っている次第です。

 

 

 

 

わたしの好きな五月山のはなし

外で過ごす時間が嫌いだと30年以上言い続けてきた。寒かったり暑かったり、汚れたり濡れたり、いいとこが一つもない。しかしこれは過去形。つい先日、いきなりタガが外れたのだ。

 

仲良しの後輩女子から、「山登り、めっちゃ楽しいから行きましょうよ」と頻繁に誘われるようになったのだが、もちろん即答でノー!山の下でおしぼり持って待っとくわ、とやり過ごそうとした私へ彼女のことばが追いすがる。「山上で豆からコーヒー挽いたげますよ」「ホットワインもいけますよ」まあ確かに楽しそう、んーでもええわ。「筋肉つくから知らん間に痩せますよ」まじか!堕ちた。ここ数年私を悩ませる最も取り組みたい案件なのである。ジムに行くよりは楽しそうだし、五月山?それなら近いし、小さい山だし、道路あるから最悪山上からタクシー呼んでもいいし、と、いそいそと出かけることになった。

 

彼女が選んだルートは上りの半分以上が階段で、これマンションで出来るやん!と雪交じりの風に吹かれカピカピの顔で毒づく私。頂上から見る景色も美しかったけれど、既視感あり。山上で飲んだホットワインも想像を超えはしなかった。

そして帰路。今のところ疲れはタクシーを呼ぶほどではないし、歩いて降りようかねとなる。

「これ貸したげますわ」彼女が差し出したのはポール。山の杖。「道ちょっと濡れてるし、三点で歩きー」

三点ってなんや、と思いながら、ポールを片手に固定。ほぼ階段だった登りとは違い、一人ずつしか進めない細い山道に、緩慢な一歩を踏み出した瞬間、いきなりヌルっと足が滑った。ああ、こける!その時だ。

「コツ!」っと音が響いた。

右手のポールが大きな石に着地し、私を支えたのだ。その「コツ!」の素朴かつ崇高でありながら可憐な響きに胸が高鳴った。一歩進むたびに「コツ!」の音を響かせポールは私を支える。五月山の山道は「コツ!」ポイントが多いのか、私が選び上手なのか、少し滑りかけての「コツ!」が何度も繰り返された。あえてちょっと滑る場所を選んでも、「コツ!」でわたしは転ばない。私とポールは二人三脚で山道をくだった。楽しかった。この山道がずっと続けばいいのにと思った。

 

あの感覚を求めて、その後、六甲山、甲山、妙見山と上ってみたが、道の幅、長さ、角度が違う。すなわちそこから繰り出される「コツ!」の可憐濃度が五月山とは全く違う。初めての経験からの贔屓目かしらと思いつつ、先週、二度目の五月山へ登った。

思いすごしではなかった。五月山の砂利が多めなのだろうか、地質が違うのだろうか、そのあたりは調べる価値がある気もするが、まあいい。今はただその音を聞いていたい。コツ音を響かせて歩くのは、ほんとに楽しいのである。雨に唄えばの名シーン的な感じでイメージ再生してみてください。

 

もし山登りに誘って断られ続けている方がいらっしゃいましたら、コツ音プレゼンどうですかね、ちなみに夫には断られました。